深夜のとある森の奥深く。
誰も通らない林道に、RV車が止まっている。
と、どこからか響いてくる、土を掘るような音。
茂みの中で無心に土を掘っている男がいる。
かなり深い穴が出来上がっていたが、それでも念入りに掘り進めている。
側には、野営用のシュラーフが横たえてあり、中が膨らんでいる。
「これくらいでいいか……」
男は穴を掘るのを止めて、一息ついた。
そしてシュラーフに目をやった。
その中には、別荘で殺してしまった妻の遺体が入っている。
証拠隠滅のために、誰にも見つからないように、ここまで運んできたのである。
男はシュラーフを引きずって穴の中に放り込もうとしたが、ふと考え直した。
「まてよ。素っ裸にした方がいいかな……」
証拠隠滅には、遺体が速やかに白骨化してくれた方が良いに決まっている。
それに妻は、結構ブランド物の衣類を着ている。
ブランドを扱う店は数が限られてくるから、顧客名簿などによって身元が判明するかも知れない。
そうなればまず最初に疑われるのは自分である。
男は、妻をシュラーフから出し、衣類を脱がしに掛かった。
夫として夜の営みにおいて、妻の服を脱がすのはお手のものだった。
脱がした衣類はシュラーフの中に収めていく。
やがて素っ裸になった妻を穴の中に放り込んで土を被せ始めた。
しかしそこだけ土の色が違うので、回りの土と変わらないように落ち葉を混ぜたりしながら、慎重に作業を進めた。
小一時間ほどして、遺体の穴埋めが完了した。
念入りに深く穴を掘ったので、大雨や多少の地震くらいでは、土の中の遺体が顔を出すことはないだろう。
妻の衣類の入ったシュラーフを抱えて、乗ってきたRV車の方に戻る男。
「これでいい」
男はシュラーフを助手席に置き、RVを発進させた。
途中には他の車と出会うことなく、無事に別荘へと帰ってきた。
身体が穴掘りで汚れていたので、風呂に入って土を洗い流した。
風呂上りに缶ビールを空けると、程よい眠気が襲ってくる。
寝室に入りパジャマを探す。
本来なら妻が用意しておいてくれたものだったが、その妻はいない。
タンスを開けて中を見ると、妻の持ち物である女物のランジェリーが、所狭しと溢れるように収まっていた。
その中からパジャマを探そうとするが見つからなかった。
妻の妖艶なるネグリジェとかが出てくるばかりであった。
疲れて寝入ろうとする夫を奮起させて、夜の営みを成就させようと、夜毎に取り替えて悩殺してくるアイテムだった。
そのネグリジェの一つを取り出してみる男。
「これを着る妻はもういないんだな……」
そう思うといとおしくなってくる。
パジャマは見つからないし……。
何を思ったのか、男はその妻のネグリジェを着込んだ。
その途端に緊張が解けて激しい睡魔に襲われて、ベッドに倒れこむようにして眠り込んだ。