第十七章 決闘
Ⅰ  打ち合わせで決められた決闘の詳細の一部は以下の通り。 1、対戦場は、テルモピューレ宙域限定。 2、一艦対一艦のPVP。 3、艦種は自由とする。 4、燃料・弾薬の補給はなし。 4、行動不能となるか、宙域を出た場合は負け。 6,非戦闘員は退艦しておく。  数日後の決闘の日。  それぞれの基地から出立した両艦隊が、テルモピューレ宙域の両端にたどり着いた。  その中から、サラマンダーとシルバーウィンドが宙域へと進み出るのだ。  サラマンダーの前方部にある戦闘艦橋。 「定刻になりました」  パトリシアが合図する。 「よし。微速前進」 「了解。微速前進」  久しぶりに艦長席に収まったスザンナ・ベンソンが復唱する。  決闘と聞いて、是非ともと艦長復帰を願ったのである。  ゆっくりと静かにテルモピューレ宙域へと進入するサラマンダー。  一方のスティール・メイスン率いるシルバーウィンドの艦橋。 「テルモピューレ宙域に入ります」  オペレーターが報告する。 「因縁のある宙域だな」  アレックスがカラカス基地を奪取し、奪還に向かったバルゼー提督が破れ捕虜とな った宙域である。その会戦でアレックスは大佐となり、艦隊司令官たる将軍への昇進 となる足掛かりを確保したのだった。  カラカス基地奪還には、三個艦隊を持って当たるべしというスティールの意見具申 が通っていれば、今頃アレックスは捕虜収容所暮らしだったであろう。 * 参照 第一部/第十二章・テルモピューレ会戦 「全速前進せよ!」  と、こちらも速度を上げた。 「まもなくすれ違いに入ります」 「面舵五度、進路変更!」  地球古代史から面々と続く、国際海事機関(IMO)が定めた世界共通の交通ルール。 右の方から船がやってきて、このままだと衝突してしまいそうな場合には、相手船 を右側に見る船が右方向に進路を変えてお互いの左舷と左舷が向き合う形、すなわち 右側通行ですれ違う。 これが海上及び宇宙での最も基本的なルール。 「通信回線を開け」 「通信回線、開きます」  正面スクリーンに相手方のスティール・メイスンが出る。 「いよいよですね。お手柔らかにお願いします」 「こちらこそ。手加減なしでいきましょう」 「もちろんです」  そして、儀礼的に敬礼を交わす二人。 「それでは」  映像が消えた。  両艦はすれ違いを終えて、一旦離れてゆく。  一定距離を進んだところで停止する。 「所定の距離に到達しました」 「よし。回頭せよ!」  シルバーウィンド艦橋。 「回頭終了しました」  オペレータの声にすかさず、 「よし! 戦闘配備、全速前進せよ」 「戦闘配備!」 「機関一杯! 全速前進!」  オペレーターの復唱とともに、戦意は嫌でも高揚する。 「さて、お得意のランドール戦法を見せてくれますかね」 「どうかな……。この宙域は航行域が狭くなっているので、ベンチュリ効果(霧吹 き)が起きて、星間ガスが乱れているからな。小ワープしたくてもできないはずだ」 「なるほど、それで戦闘域をここに設定したのですね」
     
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